たまきさんのあそびば

【風景】「電線のある空」

 
電線のある空  多間環
 

『電線のある空』と『電線のない空』、皆さんはどちらの空が好きだろうか?
 
私は、電線のある空の方が好きだ。
というより、電線のある空を愛してやまない。
 
勿論、何もない空の解放感や圧倒される美しさは知っている。
しかし、子ども時代に見上げ続けた空の美しさから、私は逃れられない。
冬、朝露のおりた電線が陽の光にきらめく情景。
夏、強い日差しに映し出された電線の影をなぞって引いた色とりどりのチョークの鮮やかさ。
秋と冬は割愛するが、どの季節もとても美しい空だった。
 
しかし、電線のある空については、しばしば風当たりが強い。
大学の時の先生は、田舎至上主義だったのもあるが、授業の中で「電線のある空で育った子は心が狭い」と言われた。
それは極端な意見だろうが、今も電線を埋設する方針が各所で見られ、電線がないことがまちのアピールポイントになっていることからも、電線のない空が時流に沿っているのだろう。
 
しかし、私はそれでも、電線のある空が好きだ。
ただ子ども時代が懐かしいだけではない。
電線のある空を見上げて沢山の物語を作った。
電線を駆け上がり遊ぶ子どもの話、電線に捕まる月の話。
心は狭くなったかもしれないが、想像力は広がった。
今もその想像力に助けられている。
仕事でしんどいとき、電線にとまるカラスに話しかける。
一人になりたいとき、電線に腰掛け両足をぶらぶらさせてお酒を飲むことを夢想して、一息つく。
 
電線のある空の美しさは、今も昔も私の心を離さない。
 
 


2018.10.13(読書会にて)

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