たまきさんのあそびば

【詩】「星の欠片(初稿)」2018/04/20

 
星の欠片
 

金平糖を食べながら、川べりを歩く
茶色く変色した花びらに、街灯だけが優しい

一昨年祖母が死んだとき、葬儀を友引にした
孫は皆社会人だったので仕方がなかったらしい
友引人形を入れていたが、それからずっと心配していた

祖母は父を溺愛していた
だからあんな甘ったれの我儘な人間になったのだ
外面は異常に良かった
沢山の人を助けた
私には沢山の傷を残した
今も怒鳴り声が聞こえると動機がして身がすくむ

映画と本を愛していた
童話を即興でいくらでも作ることができる人だった
私が父の映画好きを知らずに映画を好きになったことをとても喜んだ
高校生になっても門限は日暮れ
京都市内の決まった場所以外は一人では行かせてもらえなかった
だが
映画を見るためには夜でも外に出してくれた
映画を見るためなら大阪にも行かせてくれた

 お父さん、昨日映画を見たよ
 お父さんの好きなドキュメンタリー映画だよ
 すごく良かったよ
 お父さん、絶対この映画見た方がいいよ
 お父さん、この映画見たらなんていうかな

父が言いそうなことが想像できる
父の声と笑顔がすぐ目の前に浮かぶ
涙がこぼれおちる

見上げた空に星は見えない
金平糖をまた口に入れる

「これはな、星の欠片のお菓子なんや
 一粒食べたらさーっと空へ飛んでいけるんやぞ
 あんた、どうする?食べてみるか?やめとくか?」

そう言って、子どもを困らせて笑っていた父は
きっと隠れて沢山の金平糖を食べたのだ

誰にも気づかれずに
さーっと空へいってしまった

口の中に広がる金平糖の味は甘ったるい
きまりの悪いときの父の笑い方とそっくりだ

笑ったからといって
許せているわけではない
泣いたからといって
受け入れられているわけではない
悲しいからといって
愛せているわけではない

目をかたく閉じて
残っていた涙を落とし切る

金平糖の残りを
口いっぱいに流し込み
がりがりかみ砕く

そして
私は黙って、川べりを歩く
灯のない方へ、ない方へ

 

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