たまきさんのあそびば

【詩】「火」2018/03/14

 
「火」 
 

ぼくは小さな火をみつけた

広げた問題集を踏みつけ、勉強机の上に立った
開けた窓の下には小さな街灯
ぼくの手には小さな火

―だれだ!おまえは!
―だれだ!おまえは!

机の四方から声がする
絶え間ない怒鳴り声
母の声 父の声 妹の声
死んだ猫の悲鳴
ちぎれるまで絞った脳みそが
堪らなく痒い
窓枠から身を乗り出すと
街路樹の糸杉が
大きくのび上がり
黒く太い腕で
ぼくの首を絞める

先週子どもを殺した少年
彼の手も黒かった
ぼくの手も黒い
火をもつ手だ

小さな火を糸杉に押し付ける
糸杉は真っ赤に燃え上がり
苦しみながら落ちていった

隠れて買った週刊誌の中で
少年が笑う
君も僕と一緒だね
ああ一緒さ
いい顔して落ちてるよ
視線の先には燃え尽きた糸杉
いや、父だ
黒い煙がずぶずぶとのぼってくる
そしてまたぼくに怒鳴る

もっと出来る もっとだ!
俺の子に出来ないはずはない!
ああお父さん、ぼくはできません
ぼくはあなたの子どもじゃなかったんです

―だれだ!おまえは!
―だれだ!おまえは!

火を大きくするんだ

―だれだ!おまえは!
―だれだ!おまえは!

この家は知らない家
燃やし尽くしてやる
 

その時
 

玄関の開く音がした
パタパタと愛される妹が走る
無力な母親の帰宅

少年を窓から捨てる
暗くて下は見えない
窓を固く締めると
妹が部屋に駆け込んできた

肉の焼ける臭いが
部屋いっぱいに広がる

「今日はハンバーグだって!」
抱きつく妹を
ぼくは抱きしめる
小さな火とともに

 

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